チャラ男とちょうちょ
やっぱり好きな人だから、こうも連絡がないとどうしているのか気になる。
最後にはあたしのとこに戻ってきてくれればいいとは思うけど、だからと言ってどんと構えていられるほどの覚悟はまだできていなかった。

16時。
そろそろ裕貴が起きる時間だ。
あたしは、裕貴に電話をかけた。

「はい…どした?」

「どしたじゃないでしょ」

「え?」

「え?じゃないよ。何かあたしに言うことあるんじゃない?」

「……」

「わかんないならいーや」

「ちょ、」

裕貴は焦っていろいろ思い起こしているようだった。
あたしは、単純に連絡しなくてごめんと言わせたかっただけ。
素直にそう言えばいいんだけど、そう言わないあたし。
かわいくない女だなーってつくづく思う。

「わかんないんでしょ?もういいや!じゃーね」

「待てってば!」

裕貴がそう言った時だった。

「ゆーちゃん、誰と話してるの?」

と電話の向こうで女の子の声がした。

「ばいばい」

あたしは焦る裕貴をよそに電話を切った。

あたしは、その声があゆみだとすぐにわかった。
一度しか会ったことがなくたってわかる。
名前と顔と声を覚えるのはもはや特技レベルだ。

本当にバカな男。
普通付き合ってる女の子の横で他の女の子からの電話出ないでしょ。
裕貴の詰めが甘いせいで、あたしはこれから苦しい思いをするなんてこの時はまだ知らなかった。
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