黒愛−kuroai−
「黒田さんの髪、とっても綺麗だよね。
真っ黒で艶々して、毎日トリートメントしてるの?
大事にしてる黒髪…切っちゃお!」
髪を掴まれ強く引っ張られた。
耳下辺りの短い位置で、ハサミを構えられる。
「お願いっ!髪はヤダッ!
ヤメテーーッ!!」
私の悲鳴が倉庫内にこだまする。
それと同時に、シャッターが勢い良く開けられた。
眩しい光りの方向に、皆の視線が向く。
軋む音を立てシャッターが全開し、飛び込んで来たのは、菜緒と柊也先輩。
黒髪を一本も切ることなく、ブタ子の手からハサミが落ちた。
カシャンと音を立て床に転がるハサミ。
その音と同時に、私を押さえ込む3人の手も離れた。
自由になった私は、床に崩れ落ちて見せた。
「愛美っ!!」
白ジャージ姿の柊也先輩が駆け寄り、私を腕に抱きしめた。
「うっ…ああああっ…」
助けに来た彼にしがみつき、大泣きする私。
菜緒は自分のコートを脱ぎ、びしょ濡れの背中に羽織らせてくれた。