黒愛−kuroai−
 


「違っ…」



「しらばっくれるのも、いい加減にしな!

全部、柊也先輩に言ったからね。

あんた達が愛美にしてきたイジメの全部、さっき私が教えたから!」





ブタ子達を怒鳴り付けてから、菜緒は「ごめん」と私に謝った。



“イジメを絶対に彼に言わないで”

そう言い続けた私。

我慢できず、その約束を破ったことに謝っていた。



柊也先輩の胸から顔を離し、菜緒を見る。

首を横に振って、私も謝った。




「菜緒…私こそゴメン…

柊也先輩に言えなくて…
菜緒にたくさん心配かけて…ゴメンね…

助けに来てくれて、ありがとう…」




私を抱える腕に力が籠もる。

息が苦しくなるほど、強く抱きしめられた。



彼は吐き出すように、こう聞いた。




「中傷ポスター以外、イジメに気付けなかった…

何で俺に言わなかった?

言ってくれないと、守れないだろ…」




複雑な声色。

イジメに気付けなかった事への悔しさと、

隠していた私に、呆れのような気持ちも感じる。



< 169 / 276 >

この作品をシェア

pagetop