黒愛−kuroai−
◇◇◇
テニス大会翌日、月曜日。
朝のホームルームが始まる前に、トイレへ行った。
今朝は急いでいたから寝癖が…
自慢の長い黒髪を水で濡らし、ブラシでクセを直していた。
そこへ菜緒がやって来た。
「遅いと思ったら、髪いじってたのか。
大きい方、踏ん張ってんのかと思った」
普段なら
「変な想像は止めて」
と突っ込む所だが、
今日の私は機嫌がいい。
「ウフフ」
と笑ってやり過ごす。
菜緒がブラシを取り上げ、後ろのハネを直してくれる。
「愛美ー、今日はいつもより可愛いね。
イイコトあった?柊也先輩絡み?」
「ううん、今朝はまだ先輩に会ってない。
理由はないけど、今日は何か楽しい。イイコト起きそうな予感!」
私が笑い、菜緒も釣られて笑う。
菜緒は好き。
柊也先輩をカッコイイと言っても、絶対好きにならないと言ってくれたから。