黒愛−kuroai−
「来ないでよ」と言いたげなブタ子。
何もプリントされていない
白いDVD1枚を、彼女に差し出した。
「ブタ山さん、コレ、前に見たいと言ってた映画の録画。
私は見終わったから、あげるね!」
明るくにこやかにそう言うと、ブタ子は怪訝そうにする。
周りの友人達も、私達がいつ仲良くなったのかと、不思議そうだ。
肉付きのいい手に、DVDを押し付けた。
肩に手を置き、顔を近づけ、耳元で囁く。
「“桃ラビちゃん”のお陰で、益々ラブラブになったよ。ありがとネ」
菜緒の側に戻ると、呆れた目で見られた。
「あんな酷い奴、フォローしてやる必要ないのに…
結局、イジメを公表しないで許しちゃうし、愛美って優しいよね」
優しさはゼロだけど、フォローは必要。
ブタ子に渡したDVDには、イジメ映像が録画されている。
昨日、柊也先輩に送られ帰宅した後、着替えてすぐに学校に戻った。
目的は、倉庫内で隠し撮りしていた、ビデオカメラの回収だ。