黒愛−kuroai−
思い通りの恋愛が進む中、ふと立ち止まり考えた。
何か…物足りない…
そんな気持ちがする。
大晦日の夜、一人自分の部屋にいた。
廊下から
「愛美ー 年越蕎麦食べる―?」
と母の声がする。
「太るからいらない」
と返答し、ピンクのカーテンを勢い良く開けた。
壁を埋める、何十人もの柊也先輩。
私の大事なコレクション。
この壁と向かい合う時、いつも心が満たされた。
喜び、満足感、征服感…
そんな感情で自然と笑みが零れた。
でも、今日は笑えない。
私の中で「モノタリナイ」と声がする。
お気に入りの写真をジッと見つめた。
テニスの試合中の彼は、恐いほどに真剣だ。
目がギラつき、ボールしか見えず、勝利しか考えていない。
そうだ、満たさないのはこのせいだ。
この目が好き。
こんな目で私を見て欲しい。
愛してくれるだけじゃ、モノタリナイ…
私しか見えず、私のことしか考えられない。
そうなってくれないと…
ギラつく視線を向けて貰うには、どうすればいいのかな……