黒愛−kuroai−
 


女子トイレから出ると、ちょうど予鈴が鳴る。



廊下の向こうからバタバタと女の子が走って来て、

その子の腕と私の肩がぶつかった。




「ごめっ…あ…」

そう言うのも、顔を逸らすのも同時。




テニス部マネージャーの
中沢亜子。

朝から白ジャージ姿と言うことは、

朝練から急いで戻り、
着替える暇がなかったのだろう。




ツンと澄まして、彼女は自分のクラスに入って行く。


彼女のクラスは1-C
私と菜緒は1-F。


C組を通り越し、廊下を進む途中で背後に悲鳴を聞いた。




甲高い女子の悲鳴。
振り返ると、C組内がザワザワと騒がしい。




「何かあったのかな…」


菜緒は見に行きたそうな顔をする。

そんな彼女の腕を引っ張り、歩みを促す。



「きっと大した事じゃないよ。
ほら、急がないと遅刻扱いになっちゃう」


「うん…」




促され、菜緒は渋々歩き出した。



今の悲鳴は中沢亜子。
そうに違いない。



何があったのかな…

ウフフフフフ…




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