黒愛−kuroai−
◇◇◇
1月、冬休みが開け、今日は新学期初日。
菜緒が登校してきた時、私は珍しく本を読んでいた。
冬休みに図書室で借りた本が2冊。
タイトルは、
『私、結婚しました』
『ノサップ岬心中』
もう少しで読み終わるので、昼休みに返却に行く予定。
菜緒がコートを脱ぎ、苦笑いしながら言う。
「何て本読んでんのよ…
結婚と心中?両極端だね」
そうだろうか…
“結婚”と“心中”が対極にあると思えない。
冬休みの間、“究極の愛”とは何かと、ずっと考えていた。
結婚して愛する人の子供を産む。
それも愛の形。
愛に悩み、断崖絶壁から身を投げ、永遠に一つになる。
それも愛の形。
究極の愛がどんな形をしているのか、この本を読んでもまだ分からない。
でも…――
ページを捲る時、指を切ってしまった。
メスで切ったみたいに鋭利な切り口。
そこから真っ赤な血液が溢れ出し、人差し指を伝い流れ落ちる。
その血を舐めながら、菜緒に笑顔を向ける。
「結婚と心中、愛の形は違うけど、どっちも究極だと思わない?
ステキだよね…」