黒愛−kuroai−
 



 ◇


カラーピン事件の犯人は見付からない。

焦る先生達を尻目に、嫌がらせは繰り返された。




3日後の朝、今度は玄関から悲鳴が聴こえた。

中沢亜子の上靴が真っ赤に染められていた。

そして靴の中には、山盛りのカラーピンが…




7日後の昼は、

彼女がお弁当の蓋を開けると、ご飯の代わりにカラーピンが入っていた。




10日後の放課後は、

テニスコートに向かう彼女の頭上に、大量のカラーピンが降ってきた。




3〜4日開けて繰り返される嫌がらせ。

そのせいで彼女は最近元気がない。



ショートカットの快活な髪型、猫のような強気な瞳、

白ジャージを着ると、ペルシャ猫のように生意気に見えた彼女が、

今は段ボール箱で震える捨て猫みたいだ。




中沢亜子は怖がっている…

見えない犯人に恐怖し、
震えているのに…

まだ、テニス部を辞めないみたい…




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