黒愛−kuroai−
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嫌がらせ初日から、半月が経過した。
放課後、いつものようにテニス部の練習を見に来た私。
テニス部員がぞろぞろとコートに入る中、柊也先輩の姿が見付からなかった。
中沢亜子の姿もない。
不信に思い、二人の姿を探す。
テニス部の部室は、グラウンド脇のプレハブ長屋の一室だった。
その前を通ると、中から話し声がした。
ドアを少し開け中を覗くと、探していた二人がいた。
この位置から見えるのは、柊也先輩の背中と、俯く中沢亜子の顔。
先輩が静かに諭すように話しかけていた。
「亜子の為に言ってるんだ…もうマネージャー辞めた方がいい…
嫌がらせがエスカレートしたらどうする?」