黒愛−kuroai−
落ちながら赤い糸を手繰り、彼を手元に引き寄せた。
最後に見た彼の顔は、
白目を剥き、裂ける程に口を開け、
断末魔の叫びを上げていた。
恐怖に狂い、体を震わせ、無我夢中で私を胸に掻き抱く。
遥か下にあった岩場が、すぐそこに迫っていた。
砕け散る波しぶきが、顔に掛かる。
もう少し…
後少しで、あの岩に激突できる。
二人の体はグチャグチャに壊れ、血肉が混ざり合い、永遠に一つになれるのだ。
嬉しくて、笑い続けていた。
興奮して、子宮がとろけそうな、極上の快感を味わった。
「ギャアァァアア…ア゙…」
彼の絶叫は、濁音を最後に途絶えた。
肉体は破壊され、私の笑い声も波に消えた。
全てが思い通り。
黒い愛は、究極の形で終結した……………………………………………………ハズだった。
しかし……