黒愛−kuroai−
ドクロ柄のこの便箋を、可愛いと思い、買った覚えはある。
筆跡も私の字。
でも、書いた記憶がない。
柊也先輩…?
そんな人も知らない。
妊娠して、知らない人と心中なんて、
そんな馬鹿な事、私がする筈ないのに。
身に覚えはないが母が言うには、柊也先輩と言う男と崖から飛び下り、心中を図ったそうだ。
彼は即死。
私だけ奇跡的に一命を取り留めた。
なぜ奇跡が起きたかと言うと、
彼に抱き抱えられ落下した為、グチャグチャに潰れた彼の肉がクッションになり、
岩への激突を免れたのが原因だろうと、説明された。
それを聞いても、何も思わない。
悲しみも、後悔も、感動もない。
彼は知らない人。
名前も顔も、何も覚えていない人に、心は1ミリも動かなかった。