黒愛−kuroai−
緒方先生って…イイかも…
肌を滑る消毒綿に、甘い刺激を感じながら、彼の顔をジッと見詰めていた。
若くて、そこそこ格好イイ。
指先が綺麗で、目に力がある。
看護師の女共が彼と話す時、声を半音上げると気付いていた。
この人、きっとモテる…
まだ半人前の医者だけど、数年経てば自信も付き、もっともっと格好良くなりそう…
狙うなら、早目の方がいいと思った。
何より、虚しい心の穴を早く埋めたかった。
ピンセットを操る彼は、私の裸の肌に夢中。
真剣な目をする彼に、話し掛けた。
「緒方先生…」
「何だい?」
「単なる消毒を、そんな目でする医者は、あなただけですよ?」
「あ… 目付き怖い?
まだ新米だから、余裕なくてごめんね。
これからは、気をつけるよ」
「いいえ、怖くないです。
もっともっと真剣に、獣の目で私を見て下さい。
ゾクゾクして…体の奥が痺れちゃう…フフッ」
彼はピタリ手を止めた。
傷口から目を離し、恐る恐る私の顔を見る。
ニッコリ笑ってあげたのに、なぜか彼は青ざめた。