黒愛−kuroai−
奇妙な間が数秒空き、隣に立つ看護師が、慌てて喋り出した。
「も、もう、愛美ちゃんたら。
大人をからかうのは駄目だよ?
緒方先生ね、院長の娘さんと婚約したばかりだから、惚れちゃダメ!
なんてね、あははっ…」
へぇ…
半人前の研修医が、院長の娘と婚約ね…
素敵なサクセスストーリー…
壊してあげたくなるネ……
退屈だった心が弾み出す。
黒いエネルギーが溢れ、心の穴は見る見る黒く、塞がれて行く。
腕も足も骨盤も、全身骨折だらけで、寝たきりだった私だが、
痛みも感じず、ムクリ、ベットに上体を起こした。
驚く彼の手を握る。
「私、強敵がいるほど、燃えるんです。
緒方先生、
アナタを好きになっても……………………………イイデスカ?」
【完】