黒愛−kuroai−
初めて柊也先輩を見たのは、
入学式翌日の部活紹介の時。
一目見て運命だと思った。
ステージ上の彼と椅子席の私、
二人の間に赤い糸が見えた。
テニスコートを囲むフェンスには、徐々に女子生徒が増えて来る。
みんなの目的も柊也先輩。
彼と結ばれるのは私なのに…
こいつら全員消えてくれないかな…
キャアと歓声が上がり、
白いジャージ姿のテニス部員がコートに入って来た。
大人数のその中から、
瞬時に柊也先輩だけを見つけ出せる。
焦げ茶色のサラサラな髪。
小麦色の滑らかな肌。
切れ長の二重瞼に筋の通った鼻。
唇は色っぽく、声にも艶がある。
彼がラケットを振る度に、ドキドキと胸が高鳴った。
ブレザーのポケットからスマホを取り出し、シャッターを切る。
周りを見ると、同じように隠し撮りする女子の姿が…
フェンスを握りしめ、歯ぎしりをする。
撮るなよ…
彼は私のモノなのに…