黒愛−kuroai−
柊也先輩と一緒なら、マラソンだって楽しい。
ウキウキしながら人を掻き分け、白ジャージ集団の下へ。
「柊也先輩!」
「おっ、愛美ちゃん。
今日も元気だね。ひょっとして走る気満々?」
「はい!
一生懸命走ります!」
「ハハッ いい返事。
俺は走るのヤダなー。
ボールを追うのは楽しいけど、ただ走るだけって性に合わない」
「じゃあ、ゆっくり歩くつもりですか?だったら私も…」
ラッキーだと思っていた。
走らず先輩と5Kmの散歩なんて最高だと、笑みが零れた。
でもそうは行かない。
柊也先輩は挑戦的な視線を前方に向けた。
「走るよ。運動部は上位に入らないと、どやされるからね。
それに、テニス部から10位入賞者が出たら、顧問が全員に飯奢ってくれるって言うしさ。
今日の俺はマジで走るよ」