黒愛−kuroai−
日焼け止めを厚塗りしてきたせいか、汗をかき難い。
体に熱が籠もり、頭がぼんやりしてくる。
前方からは、折り返し地点を通過した先頭集団が走って来た。
トップは陸上部男子。
さすがだね、余裕の表情で凄いスピード。
先頭集団は10人程で、陸上部、野球部、サッカー部の生徒が占めていた。
柊也先輩の姿はまだ見えない。
気合いを入れていたけど、10位入賞は無理かも…
先頭集団が駆け抜けて行くと、急に気分が悪くなった。
軽い吐き気と手足の痺れ…
足に力が入らなくて、アスファルトに膝を付いた。
「愛美?どした?」
心配する菜緒の顔が、少しぼやけて見える。
「菜緒…ごめ…先行って…」
「わっ 顔真っ赤、ヤバイって、熱中症だよきっと。
先生呼んで来るから待って……」
菜緒がそう言った時、
「愛美ちゃん、大丈夫?」
と優しい声がした。