黒愛−kuroai−
目の前には、汗だくの柊也先輩がいた。
足を止め、私の様子を気にしてくれている。
「間違いなく熱中症だな…」
そう言って彼は、私を横抱きに抱え上げた。
「先輩…走らないと10位入賞出来ないです…」
「もう無理だよ。
やっぱ陸上部は強いや。
これからは、俺も真面目に走り込みする」
「すみません…」
「いいって。
取りあえず日陰に入ろう」
私を抱えて彼は歩き出す。
首筋に流れる汗…
彼の汗なら、ちっとも不快じゃない。
香水みたいにいい匂い…
胸がドキドキする…
近くに小さな公園があり、木陰の芝生の上で下ろしてくれた。