黒愛−kuroai−
 


菜緒は自販機で水を買ってくれて、その後先生を呼びに走って行った。



水を飲み木陰で横になると、気分が良くなって来た。


吐き気も痺れも治まり、体の異常な熱も冷めて行く。



「水、俺も飲んでいい?」


私の飲みかけのペットボトルに、彼が口を付ける。


間接キス…
嬉しいな…



夢みたいな光景だった。


芝生に横になる私、

隣に座り、ジッと見下ろす彼。



木陰には涼しい風が吹き、
木漏れ日を浴びる彼の前髪が、サラサラと風に揺れていた。



無言で見つめ合う私達…

いい雰囲気の中、綺麗な顔を見つめていると、

彼が欲しくて堪らなくなる。



今すぐ欲しい…

私だけのモノにしたい…



込み上げる気持ちが、自然に口をついて出る。




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