黒愛−kuroai−
◇◇◇
5月、緑濃くなる季節。
暖かくなったので、お昼を屋上で食べることにした。
お弁当を手に、菜緒と二人で階段を上る。
屋上へ続く重たい扉。
軋む音を響かせ開けると、眩しい光りが目に染みた。
明るい屋上は予想より混んでいた。
みんなも同じ事を考えたみたい。
屋上を囲むフェンスをぐるりと見回し、どこかに空いている場所がないかと探した。
すると、賑わう生徒達の中に柊也先輩の姿を発見する。
彼は男子三人とパンをかじりながら談笑していた。
これはラッキーだと、
菜緒の手を引っ張り、早速側へ。
先輩達の両サイドは、既に女子グループで埋まっていた。
僅か1メートルの隙間。
「すみません、少し詰めて下さい」
女子グループにそう言って、無理やり間に割って入った。
隣には柊也先輩。
私に背を向け、友達の話しに夢中。
少し動けばぶつかる距離。
右腕に彼の気配を感じ、ドキドキした。
嬉しくて笑顔の私とは逆に、
菜緒はオドオドしながら耳打ちする。
「隣の女子に、めっちゃ睨まれてるんだけど…」
睨む?
そんなの攻撃力ゼロだよ。
私の柊也先輩の隣に座る、アンタ達が悪い。