黒愛−kuroai−
菜緒と話し、お弁当を食べながらも、意識の大半は彼に向いていた。
先輩達の話題は、サッカー地元チームの昨日の試合について。
〇〇選手のポジション取りが…
あのアシストはスゲーよ…
あん時の審判のジャッジって…
テニス部の彼が、サッカー好きとは知らなかった。
その情報をしっかりと頭の中にメモしておく。
夢中でサッカーを語る柊也先輩。
「違うだろ?あん時はワンフェイク入れて、こうやって……」
話しに熱が入り、身振りで伝えようとし…
肘が後ろの私にぶつかった。
ちょうどペットボトルの緑茶を飲んでいた私。
強く腕にぶつかられ、制服にバシャッと零してしまった。
「わっ!ごめんっ!」
柊也先輩が初めて私の存在に気付く。
視線が重なりドキドキして、固まってしまった。
スカートの上に零れ続ける緑茶。
菜緒が「愛美!」と呼び、お茶を拾ってくれたので、全てを零すのは免れた。
動けずにいた私を見て、柊也先輩が慌てる。
「大丈夫?どっか痛い?怪我した?」
「あ…痛くないです。
びっくりしただけです」
「良かった……良くないか。
ごめん、制服びしょ濡れだな」