誰よりも優しい総長様
「慶、驚かないんだね?」
「はぁ?」
「だから、柚那もあの日からずっと眠ったままなんだよ。」
眠ったまま…
「まじ…かよ…」
俺は一瞬にして目の前が真っ暗になるようだった。
夢の中だろう暗闇で呼んでくれたあの愛しい人がまだ眠ったままだなんて信じられなかった。
そんな時
ドタドタドタ
廊下が騒がしくなった。
そして聞こえてきたのは看護師たちの慌てた声だった。
「305号室の神崎さん、呼吸が止まったって。」
その看護師の言葉に俺や伊月、蓮は固まった。
「なぁ、神崎って…」
「柚那だ。」
俺は何もかもが考えられなくなった
柚那がこの世から居なくなる?
不意にそれだけが頭の中に過ぎった。
「とりあえず行くよ。今はあの部屋に加代ちゃんを置いてきてるんだから。」
そう言うと伊月は側にあった車椅子に俺を移動させると車椅子を押しながら柚那の部屋に向かった。