誰よりも優しい総長様


「でも、高校生よね?しっかり考えないとだめよ。この赤ちゃんを産むならあなたも学校を辞めなきゃいけないし、彼も働いてお金を貯めなきゃならないわ。それに保護者の同意も必要よ。」


あたしはあまりのことにもう何も言えないまま診察室を後にした。


妊娠してることは嬉しい。


でも、それは慶に言える?


突然別れを切り出され気持ちの整理のできないままのところに妊娠だなんて…


あたしはもうどうして良いか分からなかった。


家に帰ってからはとりあえずママにだけは伝えた。


「ママ、あたしのお腹に赤ちゃん居るって…」


ママは一瞬驚いていたけどもすぐに微笑んでくれた。


「そう。柚那はどうしたいの?」


「あたしは…産みたい。」


「そう。ならママはできる限りのことはするわ。この子の父親は?」


そう言われたときあたしは一瞬戸惑った。


この子の父親は間違いなく慶


でも慶と別れた今、父親となるのは一体誰なの?


「たぶん慶だと思う…」


これ以上はママも何も聞いてこなかった。


たぶんママは分かってるんだろうね。


あたしが何かを言えずにいることを。


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