誰よりも優しい総長様
「あ、そうそう。そのために来たんだよね。」
そう言って美空は真剣な眼差しで俺を見た。
俺は思わず生唾を飲み込んでいた。
「あのね…」
その後に続けられる言葉は俺を驚かすには十分だった。
「柚那ちゃん、妊娠してるよ。」
柚那が妊娠…!?
俺は一瞬美空の言葉を疑った。
そして今度は扉の方を向いて外に呼びかけた。
「入っておいで。」
その言葉に間を置くとゆっくりと扉が開かれた。
そこにあるのは俺の愛するあいつの姿。
変わらない長い髪にオッドアイ
あいつを象徴する特別な容姿
それはあの時から変わっていなかった。
「け…い…」
信じられないとでも言うように溢れた言葉
あいつの目には涙が浮かんでいた。