誰よりも優しい総長様
そんなのを感じた瞬間
堪えていたはずの涙が止めどなく溢れ出してきた。
そんなあたしを抱きしめながら慶はただじっと黙って昔みたいに宥めてくれていた。
何時間泣いただろうか。
少し落ち着きを取り戻した頃にはもう空は茜色に染まっていた。
「柚那、倉庫に行こうか。」
あたしは何も言わず首を横に振った。
みんなに心配を掛けてることは分かってる。
でもまだ会いたくないんだ。
「しゃーねっ、どっか行くか。」
そう言って慶はポケットから取り出したキーをちらつかせた。
あたしが首を縦に振ると、慶はあたしの腕を掴んで教室を出た。
そして駐車場へ行けばお兄ちゃんの姿が見えた。
近づいていけばどうやらお兄ちゃんもあたしに気づいたらしい。
だんだんと距離は縮まっていった。
そしてだいぶ近づいたときお互いの足は止まった。
「慶か?」
先に口を開いたのはお兄ちゃんだった。
「弘毅さん、お久しぶりです。」