誰よりも優しい総長様
慶はそう言ってお兄ちゃんに頭を下げた。
「んで、今頃なんだよ。」
お兄ちゃんの声はどこか低く感じた。
「お兄ちゃん…」
あたしがそう声をかけた時と同時ぐらいに慶も口を開いた。
「ちょっと柚那借りますね。」
お兄ちゃんは何も言わずその場を立ち去った。
かと思えば自分のバイクからメットを取るとあたしに向かって投げてきた。
「慶、あまり遅くまでは許さねーから。」
それだけを言うとお兄ちゃんはバイクをふかして帰っていった。
「ほら、行くぞ。」
慶はあたしの手にあったメットをあたしに被せるとさっさと自分のバイクに跨った。
あたしも躊躇いながら慶の後ろに乗る。
あぁ、この感じも懐かしい。
あたしはふとそんなことを考えていた。