誰よりも優しい総長様
しばらく走り着いた先は海だった。
「この時期に海?」
今はまだ春
海に来るには早すぎる季節だ。
「ここならゆっくり話せるだろ。」
確かに人は居ない。
あたし達はとりあえず海辺を2人で並んで歩いていた。
「潮風が気持ちいいね。春の海も悪くないかも。」
「だろ?」
慶は笑いながら答えてくれた。
しばらく歩いた後、あたしと慶は側にあった塀に座った。
「本題だ。」
慶は突然切り出してきた。
「ねぇ、慶はどこまで知ってるの?」
「俺が聞いたのはお前が俺の為にあの場所を降りたこと。そこだけだ。」
そっか。
みんなは詳しいことを知らないし、慶にも何も言ってないんだね。
「あたしがあそこを降りたのは慶の為じゃないよ。あたしがそうしたかったから。」
そしてあたしは慶に自然とあの時のことを話そうとしていた。
何も隠すことなく、あったこと全てを。