誰よりも優しい総長様
「ようこそ、蝶美。いや、神崎 柚那さん。」
そいつはあたしのことを調べあげていた。
あたしはこの時初めて人を怖いと感じたんだ。
そして、そこの総長はあたしを見るなり囁いた。
「羨美には今最強と謳われた者は存在しない。これがどういうことか君ならわかるよね?」
羨美のみんなが危ない!
あたしは咄嗟にそう感じていた。
でも、あたしはしばられて相手の手駒の一つでしかいられない。
つまり、助けに行けなかったんだ。
「やめて!羨美には手を出さないで!」
そんなことを言ったとしても通用する世界でないことは分かっていた。
それでもあたしは咄嗟にそう叫んでいたんだ。
そんな時だった。
あいつは口の端を引き上げてニヤリと笑ったんだ。
「羨美には手を出さないで?ならお前が俺の女になれよ。見た目だけは良いからなー。どうだ?それが交換条件だ。」
そう、あたしに与えられた選択肢は2つだけだった。
慶が託してくれた羨美を守る方法はたった1つ
あたしが相手の女になる。
その選択肢が出された時点であたしの覚悟は決まっていたんだ。
「分かったわ。その条件を飲む。そのかわり絶対にみんなには手を出さないで!」
「あぁ、いいぜ。約束だ。」
そう言うとそいつは誰かに電話をかけたんだ。