逢いたい~桜に還る想い~

「悔しいって……トーコさんらしいね」


「音楽棟に寄ろうと思ってたのになー……それも諦めた」


「音楽棟?」


「そ。ピアノ練習しとこうと思って。

家のは、バイトあったりして、時間的にあんまり弾けないから」


「授業の?」


「……そう。連弾って、二人組で弾くのやってるから、ちゃんと練習しとかないと相手に迷惑かかるし」


「へぇ……いろいろやるんだね」


「自分の専攻のは、もっとおかしなのやってるよー。

───インディアンのテント建てて、その中で石狩鍋や焼き芋作って食べたり」


「なに、それ??」


郁生くんが「面白そう」と笑う。


「専攻学科、なんだっけ?」


「教育学部小学校教員養成課程家庭科専攻」


「長いね………てか、家庭科なのに、インディアン??」


「住居実習なんだけど……教授がヘンな人なんだよねー……」


そんな話をしていたら、

───ちょうどそこへ、上り電車が入ってきた。



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