逢いたい~桜に還る想い~
「郁生く───……」
「先………帰って」
「え……?」
「トーコさん、先に帰っててよ」
「でも……」
「……早く帰んないと、もう一回抱きしめちゃうよ?」
さっきので懲りず、またそんなこと言って、悪戯っぽく笑うから、
「───べーっだ! 出来るもんなら、どうぞ」
どうせまた赤面すんの見て、“単純”とか思ってからかうんでしょ?
その手には乗らない!と、あっかんべーして、踵を返すと……
ふわっ
背後から、包み込まれる感触。
郁生くんの腕が、ギュッ……と一瞬あたしを抱きしめる。
「────………」
かすれた声で、何かを小さく呟いて、
……振り向くと。
後ろ手に、手を振りながら、
………去っていく郁生くんの背中。
あたしは────声を掛けられず、
見送ることしか、出来なかった…………