逢いたい~桜に還る想い~
第五章
紅い夢幻~ユメマボロシ~
★ ★
前期試験も終盤───あたしは、母親のケータイに電話を掛けていた。
実家に帰る日をもう少し延ばせないか、相談しようと思って。
……が、なかなか出ず、なんだか出鼻を挫かれる。
今日はパートの日じゃないだろうから、ケータイ置きっぱなしで家事に忙しくしてる?
まだお風呂に入る時間じゃないし……仕方ない、家に掛けたら出るかな。
家電のコールを数回鳴らすと、案の定電話に出たので、
「あっ、もしもし……」
『はい、真鍋です』
その声に、あたしは一瞬で固まった。
───郁生…くん……