逢いたい~桜に還る想い~

お豊を蹴り飛ばした父上が、ユラリ私へ近づき、

鞘から抜かれた真剣が、私の鼻先に突きつけられた。


『そなたが、やれ』


有無を言わさず、私に柄(ツカ)を握らせ、乱暴に二人の前に突き飛ばす。


お豊……お悦……


固まっている私に、お豊が囁くように話し出した。


『澪様……私はこの上なく幸せでしたよ?

小さな澪様が日々愛らしく成長されるのを、こんなにお側近くでお仕えできて……私の生き甲斐でした。

ですから───』


小さい頃からずーっと甘えてきた、花のほころぶような笑顔で……


『貴女様は、貴女様のままで……どうか、生きて……幸せを掴んで……生きて……』


あぁ………こんな時でも、あなたは私の幸せを願ってくれるの?




躊躇する私に、お悦が叫んだ。


『姫様───政尊様に危害が及ばぬうちに、私達を……早く……!!』


その声に、弾かれたように振り向くと、

父上が嘲笑いながら、真の首筋に赤く光る短刀をちらつかせているのが目に入った。


苦しげに顔を歪めた真の手は、自らの足を押さえ、

その指の間から血の赤が見えた瞬間────



私の頭の中は、真っ白になった。



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