逢いたい~桜に還る想い~
そう言って笑う郁生くんに、あたしの頬が熱を帯びる。
ばか……不意討ち………
そんなあたしの手を、郁生くんがきゅっと握った。
「よし! トーコさん、走ろ!」
「えっ……わっ……」
またもやあの時と同じように、引っ張られる形で、あたしも走り出す。
「まずは蝋纈染め(ロウケツゾメ)の家ね!!」
「な……なんで、走るのー?」
「えー? 時間もったいないじゃん!」
「まだ、着いたばかりだよー」
「やりたいの、いーっぱいあるもん。ほら早く行こー!」
手を繋いで走りながら、おかしくなって、笑い出す。
「トーコさん、あれじゃない?」
「ほんとだ───あーっ、のぼり綺麗!! あれ染め物かなあ?」
はしゃいで手を繋いでくれる、嬉しそうな彼に、
“大好き”の気持ちが溢れて………
この瞬間────
余計なことが、頭から吹き飛んでいた………