逢いたい~桜に還る想い~
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オープンの時間に合わせて来たあたし達は、一番乗りだったらしい。
蝋纈染めの家は、“にじいろの郷”の中でも奥まった場所にあり、
白髪を薄紫に染めておしゃれな眼鏡をかけた、品のよいお婆さまが出迎えてくれた。
「八重森節子(ヤエモリ セツコ)と申します。“節子さん”って呼んでいただけると嬉しいわ」
そして、節子さんはあたしと郁生くんを、早速奥の工房へと案内してくれた。
「お二人とも、染め物は初めてでいらっしゃる?」
小さな白い布地を目の前に置かれ、ちょっと緊張気味に「はい」と返事をすると、
節子さんは、丁寧に説明してくれた。
───蝋纈染めはその名の通り、蝋を使って模様を描きながら布を染める手法だそうだ。
溶かした蝋を筆で布に塗り、模様を描く。
その上から染料でその布を染色し、蝋を落として水洗いする。
色で染める前に蝋を塗った部分は白く染め抜かれる。
職人さんだと、この工程を繰り返して、複雑な絵柄を作り出すんだそうだ。