逢いたい~桜に還る想い~

    ★    ★


オープンの時間に合わせて来たあたし達は、一番乗りだったらしい。


蝋纈染めの家は、“にじいろの郷”の中でも奥まった場所にあり、

白髪を薄紫に染めておしゃれな眼鏡をかけた、品のよいお婆さまが出迎えてくれた。


「八重森節子(ヤエモリ セツコ)と申します。“節子さん”って呼んでいただけると嬉しいわ」


そして、節子さんはあたしと郁生くんを、早速奥の工房へと案内してくれた。




「お二人とも、染め物は初めてでいらっしゃる?」


小さな白い布地を目の前に置かれ、ちょっと緊張気味に「はい」と返事をすると、

節子さんは、丁寧に説明してくれた。



───蝋纈染めはその名の通り、蝋を使って模様を描きながら布を染める手法だそうだ。


溶かした蝋を筆で布に塗り、模様を描く。
その上から染料でその布を染色し、蝋を落として水洗いする。
色で染める前に蝋を塗った部分は白く染め抜かれる。


職人さんだと、この工程を繰り返して、複雑な絵柄を作り出すんだそうだ。



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