逢いたい~桜に還る想い~
「俺は、落ち込んだりしてないよ?
全然妬いてないって言ったら嘘になるけど……『トーコさんは俺のだー!』って、おおっぴらに言えないからさ。
でも……不安はないんだ、だって……」
くっつけたおでこを少し離した郁生くんは、
───意外にも、笑顔を覗かせた。
「だって、───トーコさん、俺のことしか見てないもん。
横から来た誰かにとられちゃうなんて、絶対ないし」
「………っ!」
そ………っ!
こんな話をしてるのに、満足そうな瞳であたしの頬にむにゅっ、と手をやる彼。
「真面目に話してるのに……ばか……っ」
頬を引っ張っていた指先が唇に滑り、「真面目だよ?」と親指でなぞるから、
「………ばか……」
あたしは小さく呟きながら、───その声が吸いとられるように、キスをした。
「俺も……トーコさんだけ………この先、何があっても」
掠れた声で呟くその唇に、思わず、今度はあたしから、もう一度キスをする。
「………うん」
そんな真っ直ぐな瞳を間近に見つめていたら、なんだかぽろっ……と涙がこぼれた。