いつもの電車で。
「そ、そうですね。狭いですね。」

私は緊張して頭がうまく回らなかった。変なことを言ったと思った。でもおじさんはまたにっこり笑って

「そうですねー今日はいつにもまして狭い気がしますね。何かイベントがあるのかもしれませんね。」

と言った。

おじさんが優しく答えてくれるから、だんだんと緊張がとけてきた。

「あ、そうですね。いつもはもっと早いんで、この時間はこれくらいなのかと思いました。そうじゃないんですね」

「ええ、私はよくこれか、この一本前に乗るんですが、こんなに混んでるのは珍しいですよ。」

そこでおじさんの降りる駅に着いたようだった。
おじさんは駅を確認し、 私の方を見て、軽くお辞儀しながら

「では、お先に。行ってらっしゃい。」

と言って降りて行った。
私も軽くお辞儀をして返した。
あんな人もいるんだなーと思いながら、私は電車に乗り続ける。
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表紙・目次

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