きみに出会う10秒前。




今思うと、


なんでこの子に〝夏樹〟だなんて言ったんだろ……




別に本当の名前を教えたってよかったはずなのに。




たぶんあの時の俺は本当に追い詰められていたんだろうな……







俺は自分のことを舜じゃなくて夏樹だと思ってしまった。


みんな夏樹のことばっかり注目して…



俺の好きになった子はみんなNATSUKIの大ファンで、夏樹に惚れていった。




そして俺に近づく女はみんな夏樹が俺の兄貴だと知って近づいているんだ…





高校では秘密にしているけれど、小学校と中学ではすぐ広まって女がたくさん寄ってきた。







女はミーハー。



内面なんて見てない。




俺のルックスと、

兄の夏樹。




それしか眼中にないんだ。





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