きみに出会う10秒前。



さっきハンカチをあげたあの子が走って追いかけてきた。



「ん?どうした?」



まだ何かあるんだろうか。


お礼とかはいらないんだけど。




「名前、教えてくれませんか?」



「名前?」




俺の名前を聞きにわざわざ追いかけてきたのか……




「………鈴掛 夏樹」





俺は嘘をついてしまった。




「鈴掛……夏樹………いい名前ですね」







ほんとは夏樹なんかじゃない。









俺の名前は、鈴掛舜だ。







夏樹なんて名前がこの世で1番大嫌いなのに……






「じゃあありがとうございました!夏樹くん!」




こんなに笑顔で真っ直ぐな目で、俺を夏樹だなんて呼ばないで……



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