甘いキャンディちょうだい

七瀬瑞希は大学を卒業して、ここの学校の保健医になったばかり。
翔太も最初は新卒という言葉に期待していた。

しかし、瑞希はとても大学卒業したばかりとは思えない地味で冴えない人だ。

つい最近まで大学生だったというフレッシュ感もなければ、可愛さもない。
期待を裏切られたのは翔太だけではなかった。


「苛々してるね。カルシウム不足?」

「別に」

素っ気なく答えると、瑞希は何かを察したように白衣のポケットからキャンディをとりだし、翔太の手に握らせた。


「何すか」

「飴。苛々してるときは甘い物がいいんだよ。それ駅前のキャンディショップで買ったのだから美味しいと思うよ」

「はあ…。どうも」

「女の子と揉めるのはまだ早いよ。ま、お節介なことだけど」


気を付けて帰ってねと言いながら手をヒラヒラさせ校舎に戻っていく瑞希。


翔太はその後ろ姿を見つめたままキャンディを口にした。


「あま…」


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