朝のバス
「また断ったのー?まあ、あの子は性格に難ありだから仕方ないけどさ〜あんなにいっぱい告られてるんだから誰かと付き合ったら?」
女の人が先輩に言う。どうやらあの女の人は噂の女の人じゃなく、噂の女の人は既に散ったみたい。私は友だちに引っ張られて近くのロッカーの中に隠れてしまった。
「なんでそのこと知ってるの?」
はじめて先輩のちゃんとした声を聞いた。思っていたよりも落ち着いていて、少し低めな安心感のある声だった。
「あの子、全部バラして泣きながら走ってったよ。いいからさ、誰かと付き合いなよ、幼なじみの私が周りにいろいろ言われるんだよ?」
「いろいろって?」
「付き合ってるんじゃないかーとか、好きな人いるか聞き出してきてーとか!」
先輩は少しびっくりした顔をして女の人の方を見ると軽く頭下げて
「ごめん」
と言った。