脱・不幸恋愛体質
「翔君はきっと、蘭さんの面影を追っていたんだよ。私、そんな翔君とは付き合えない」
「……」
「好きなんだったら、遠恋だろうと何だろうとしっかり繋ぎ留めなきゃダメだよ」
強がりとかじゃない。
本心から言えた事に、自分でもびっくりしたんだ。
「……でも、これだけは言える。愛莉ちゃんは、俺にはもったいない位の素敵な女の子だったよ」
『だった』……か。
翔君の中でも終わって居るんだね。
そう、これで終わり。
「私も、凄い幸せだった」
笑顔で言えた私に、翔君は
『ありがとう』
と言ってくれた。
「ごめん、ちょっと1人になりたいな」
「……分かった」
翔君は少し考えたあと、そう言うと立ち上がり海の家に戻って行った。
1人になった私。
ただ、全てがふりだしに戻っただけ。
1つ幸せを知って、1つ心に傷を負った。
ただそれだけ。
沈んでいく夕日に染められた私の顔は、どう見えているのかな?
そんな感傷的な状況のはずなのに、不思議と涙は出なかったんだ。