脱・不幸恋愛体質
少し暗いのが、何よりもの救いだった。
真っ直ぐに見つめてくる翔君から少しだけ顔を逸らすと、勇気を振り絞った一言を……
「好…き……」
言い終わるのと同時に、唇に感じる温もり。
瞳なんか閉じる暇も無いくらいの短時間。
『翔君、私の答え知ってた?』
って思う位スマートで、無駄の無い動き。
『好き』
私きっと、そう言うきっかけが欲しかったんだ。
今度こそ、幸せになれる…よね。
唇が離れた瞬間、重なり合う視線に照れ笑いしてしまう。
狭いはずの個室なのに、今はそれが心地良かった。
「愛莉ちゃん、幸せにするから」
自然に受け入れて頷く私に、翔君は満足気な笑顔で髪を撫でてくれた。
結局、掃除なんて一つもせずに海の家に戻ってきた。
もちろん、相合い傘しながら。
ただ一つ、行きと違っている事は……
手を繋いでいる事。
その手から、私達付き合ったんだって実感が伝わってきた。
常に優しく私を気遣ってくれる翔君を見ながら、『これで良かったんだ』と思えたんだ。
翔君なら幸せにしてくれる。
そう信じて疑わなかった。