脱・不幸恋愛体質
「久しぶりだな」
嫌でも耳に入ってくる会話。
誰?
友達とかだよね?
そう思いながらも、最悪な事ばかりが脳裏に浮かび上がってくる。
もしかして、これが蓮が止めた理由?
なんて、また私ったら嫌な事考えてるし…
目の前でパチパチと音を立てている線香花火に、一生懸命意識を集中させた。
すると、横にしゃがみこんできた彩乃が、私の線香花火に新しい線香花火をくっつけてくる。
やがて、彩乃の持つ線香花火に火が付き、彩乃の顔を照らす。
「今、帰って来てるのか?」
急に大きくなる声に、私の体がビクッと反応した。
そっと背中に手を置いてくれる彩乃。
今にも泣きそうな私。
弱い私。
『ダイジョウブ』
口パクで言い終わると同時に、線香花火が地面に落ちた。
「今から…行くよ」
静かな海辺に響きわたる、翔君の低く切羽詰まった声。
その直後、電話を切った翔君は携帯電話を蓮に返し、きびすを返し土手に向かって走り出そうとした。