番外編「雨に似ている」1話読み切り
「額田……少し走りませんか」
そう言うと、大海人はきょとんとしている額田王の体を支え馬の蔵に乗せ、素早く自分も馬に乗った。
「急ぎます。しっかり捕まっていてください」
大海人は、穏やかに言い馬の腹を蹴った。
秋の薬狩りで、馬に乗る際バランスを崩しふらつき世話人に体を支えられ、苦笑いをした……あの大海人様が?
額田王は腰に回した手に力を込めた。
馬に揺られる間、額田王はあの時を思い出した。
大殿の脇庭で、高向臣国押と話していた時の大海人の目を。
高向の忠誠心は欲しくないと話していた、あの哀しい目を。
薬狩りの日。
空を飛ぶ鷹を追っていた、あの目を。
自由になる。
それは彼にとって――。
喉を灼く熱さに額田王は、声を上げてしまいそうだった。
激しい揺れに額田王は息を詰める。
風景は次々に飛び去っていく。
やがて馬の速度がおちると大海人は、手綱を締めて歩調を緩めた。
そう言うと、大海人はきょとんとしている額田王の体を支え馬の蔵に乗せ、素早く自分も馬に乗った。
「急ぎます。しっかり捕まっていてください」
大海人は、穏やかに言い馬の腹を蹴った。
秋の薬狩りで、馬に乗る際バランスを崩しふらつき世話人に体を支えられ、苦笑いをした……あの大海人様が?
額田王は腰に回した手に力を込めた。
馬に揺られる間、額田王はあの時を思い出した。
大殿の脇庭で、高向臣国押と話していた時の大海人の目を。
高向の忠誠心は欲しくないと話していた、あの哀しい目を。
薬狩りの日。
空を飛ぶ鷹を追っていた、あの目を。
自由になる。
それは彼にとって――。
喉を灼く熱さに額田王は、声を上げてしまいそうだった。
激しい揺れに額田王は息を詰める。
風景は次々に飛び去っていく。
やがて馬の速度がおちると大海人は、手綱を締めて歩調を緩めた。