番外編「雨に似ている」1話読み切り
が、今日は朝から冷え込んで商店街の人の波が、この時期にしては少ない。

夕方になっても、店先に設けた陳列のケーキの箱がなかなかはけないようだった。

寒い日は甘いものより暖かいもの、腹の足しになるウマイものが好まれるのだろうか。

なんて思いながら、チキンの箱を袋に詰めて手渡す作業を「ありがとう」の言葉と営業スマイルを添えて繰り返している。


天気予報では夕方から雪になると報じられていた。

店先の作業なので、ポケットに使い捨てカイロを忍ばせ、店の制服の上に赤い上着を羽織り、地味に体を暖めている。

向かいの店で売り子をしている千鶴さんがよく見える。

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