番外編「雨に似ている」1話読み切り
「俺、9時までで上がりなんだ。1つ、残しといてよ。帰りに寄るから」

思い切って言ってみる。


「どれ?」


「ん……生のホワイト」


千鶴さんがΓOK」頷き、Γありがとうございます」と、笑顔を向ける。


今しかない、そう思うと人は大胆になれるものだ。


俺は間を置かず「何時まで?」と尋ねた。


「いつもは8時、でも今日は売れるまでかも」

千鶴さんが伏し目がちに答える。


思わず、台の上に重ねた箱を数えると10数個ほどある。


「けっこうあるな……」

言いながら携帯を取り出し操作する。


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