番外編「雨に似ている」1話読み切り
そして、

「ありがとうございます」

と、また笑顔。



頬っぺた吊りそう。



「やだ……雪が降ってきた」


その声にカウンターから向かいの店先に目を向ける。



台の上のケーキの箱はあと数個、ホッと胸を撫でる。


「千鶴さん」

店の奥さんに呼ばれて、店先の売り場を片付ける千鶴さんの様子を眺める。



「あらっ、もうそれだけ? ずいぶん売ったのね」

千鶴さんと台をかかえながら奥さんの明るい声が聞こえた。


腕時計に目を落とすと、8時半前。

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