番外編「雨に似ている」1話読み切り
朝から何度も聞いた千鶴さんの「ありがとう」が耳に残る。


「ありがとう」って、こんなに温もりのある響きだったかと何だか嬉しくなる。


店から出てきた千鶴さんが、こちらの店に入ってくる。


「終わったんだ」

白々しく言う。



「うん、雪降ってるから早目に上がっていいって……お陰様で商品も売れたし、ありがとう」

そう言ってケーキの箱を差し出す。


「奥さんから頂いたの。お礼に」


笑顔を添えて千鶴さんが言う。


短くお礼を言うと、千鶴さんがメニューを手に取り、注文しようとする。


< 42 / 54 >

この作品をシェア

pagetop