番外編「雨に似ている」1話読み切り
千鶴さんの目の前で、ピンと立てた人差し指を振る。


千鶴さんは、大きな瞳をさらに大きくし首を傾げる。


「もうすぐ上がりだから、座って待っててよ」

俺は珈琲を手渡し、奥の席を指差す。


「寒いからさ。暖かいもの食べて帰りたいだろ、誰かと」

さらりと、……内心ドキドキしながら言う。


1日の終わり、しかも今日という冬の特別なイベントの日に1人で飯食うなんて寂しすぎる。


「ダメ?」

きょとんとしている千鶴さんの顔を覗きこむ。


「いいね」

千鶴さんは、そう呟いて微笑んだ。



よし!
きたーーーっ!!



何が始まる、予感。



外は粉雪。
しんしんと粉雪が舞っている。


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