番外編「雨に似ている」1話読み切り
コートに身を包んだ仕事帰りの会社員や腕組みをしたカップルが店先を足早に通り過ぎていく。


玄関を開けると迎えてくれる人がいて冷えた部屋を暖めることもなく、暖かな部屋があり、団を囲み話す相手がいて……そんな極当たり前の日々が得られるはずだった。



1人よがりの思い、儚い夢だったことに気づいて失った人の大きさを知った。



慌ただしかった1日が、あと数時間で終わる。


昼間に数件、施設を巡り差し入れた商品に無邪気な笑顔が返ってきた。

彼らは、もう食べてくれただろうか?



晩秋に売り出される恒例のワインを開け、ルビー色のそれを口にし「美味しい」と交わしあった。


あれからまだ、1ヶ月余りしか経っていない。



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